English


巻頭言
改革と合意形成
元長崎大学生涯学習教育研究センター長
                     糸山 景大
 激動の2002年を迎えた。昨年に引き続き、「改革」を迫られる一年となろう。大学もまた、改革の流れから逃れられない言うまでもない。昨年は、大学改革のための「試案」や「私案」が教授会でも提起された。私が所属する教育学部は、教員養成学部の統合・再編にどのように対応するかが、昨年始めから大学改革の議と共に、論議の対象であった。
 こうした議論の中で、一つ気にかかることがある。「試案」や「私案」がトップダウンの形で提起されてくることが非常に多くなったという印象が強い。少なくとも、合意形成を図ろうというようには見えないことが、しばしばある。
 この合意形成について、私見を述べたい。合意形成を図るために、私はどのような場合でも、次の4つのステップを踏む必要があると考えている。第一のステップは、その課題に対して、課題に関わるすべての人が情報を共有し、現状把握・現状認識を行うことである。情報の公開・開示が求められるのはこのためである。しかし情報を共有し現状を把握できれば、合意形成が得られるかというと、そうはうまくいかない。
 第二のステップとして、現状把握・現状認識を基にした、現状分析が必要となる。現状分析は視点を変えると、その結果が変わる場合が少なくない。議論を最も必要とする部分は、実はここにある。「視点を変えて物事を見る」ことの重要さは、現状分析の結果に変化を与えることにつながること、ひいては課題の抽出に違いが出ることを私たちは理解しておく必要があろう。ゴミ問題などで特にそうなのだが、行政側からの現状分析は、必ずしも住民側からのそれと一致するとは限らない。そのため課題もまた一致するとは限らない。大学改革に関する諸問題の解決のステップもこれと変わらない。
 第三のステップは、課題の抽出である。第二ステップで現状の分析が済めば、そこからかなり容易に課題を抽出できる。しかもこれらの課題に優先順位を付けることも難しいことではない。県や市の審議会・協議会に出席したときに時々出くわすのだが、出てきた資料の第1章に「現状と課題」など書かれた例がある。資料を作られた行政の担当の方にすれば親切心もあろうし、その方が仕事もはかどるという思いもあろう。しかし、審議・協議に参加した側からすれば、現状の分析も済み課題も分かっているのであれば、今更何を審議・協議するのかと言いたくなる・
 第四のステップは、目的の共有である。抽出され、優先順位が付けられた課題に対して、何を目的としながら課題を解決していくのか、それに関わる人々がその目的を共有できるかどうかという点である。合意形成の最終的な姿こそ、目的の共有なのである。
 この4つのステップの中で、現状分析から課題抽出のステップが最も時間を要し、骨も折れる。だからこそ現状分析や課題抽出に関わることによって、潜在的な活動力としてのポテンシャルも高まっていく。結果的には後々の活動がスムーズに進むことになる。
 最近、指導者のリーダーシップが問題にされる。しかし、指導者のリーダーシップとは自らの理念や構想に無批判に従わせることではあるまい。合意を作り上げる道筋を示し、そこを議論するかを示すことが、本来のリーダーシップではないだろうか。
 長崎大学 産学官連携戦略本部 人材育成部門 生涯教育室 Copyright(C) 1996-2011 Nagasaki University All Rights Reserved.